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「奇跡の町」は当たり前の町、の巻 [日録]

昨日は、岸田首相が、わが郷里にほど近い辺鄙な寒村を「視察」に訪れたというニュースが流れました。いつものように、記事をちょっと拝借させていただきます。

岸田首相が岡山県奈義町視察 少子化対策「奇跡のまち」(「日経」)

岸田文雄首相は19日、岡山県奈義町を訪問し2回目の「こども政策対話」を開いた。子育て支援に力を入れ2019年の合計特殊出生率が2.95だった奈義町は「奇跡のまち」と呼ばれる。

首相は記者団に「子ども政策強化のためには社会全体の意識を変えていくことが重要だ」と語った。

岸田政権は少子化対策を最重要課題に位置づける。首相は奈義町の子育て支援の拠点「なぎチャイルドホーム」などを視察した。子育て世帯が集まって相談したり一時預かりの子育てサポートをしたりしている。(以下略)

出生率2・95…「奇跡のまち」岡山県奈義町を岸田首相が視察(「読売新聞オンライン」)

岸田首相は19日、子育て支援に力を入れる岡山県奈義町を訪れ、子育て支援施設を視察した。同町は2019年に合計特殊出生率が2・95となり、「奇跡のまち」として注目されている。。(以下略)

首相は、子育て中の家族が同世代や地域の高齢者と交流できる「なぎチャイルドホーム」の利用者らと意見交換した。子育て世帯が高齢者に子育ての悩みを気軽に相談でき、一時預かりなども行える施設だ。育児の合間にできる仕事を紹介する「しごとコンビニ」の拠点も訪問した。(以下略)

岸田首相 独自支援策で出生率上昇の岡山 奈義町を視察(NHK NEWS WEB)

2023年2月19日 19時11分 岡山県

岸田総理大臣は、地域ぐるみで子育てに取り組む岡山県奈義町を訪れ、拠点施設を視察し、子育てに対する社会全体の意識を変えていくことが重要だという認識を重ねて示しました。

岡山県奈義町は、町独自の子育て支援策や若者の定住などを進め、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率が、2005年の1.41から、2019年には2.95に上昇しました。
岸田総理大臣は19日、奈義町の地域ぐるみで子育てを行う拠点施設を訪れ、住民が子どもを預かったり、常勤の保育士が相談に応じたりする様子を視察しました。(以下略)

岸田首相「奇跡の町」で“子育て支援”を視察 岡山・奈義町日テレNEWS

岸田首相は「少子化対策・奇跡の町」と呼ばれる岡山県奈義町を訪れ、子育て支援の現場を視察しました。 岸田首相は岡山県奈義町を訪問し、子育て中でもワークシェアで仕事ができるようにする「しごとコンビニ」事業の現場などを視察しました。 奈義町は地域ぐるみで子育て支援を行った結果、合計特殊出生率が全国トップクラスで、「少子化対策・奇跡の町」として注目されています。 岸田首相「子ども政策強化のためには、施策の拡充ももちろん重要だが、あわせて社会全体の意識を変えていくことが重要」 岸田首相は今後も全国各地を視察し、来月末までに自らが打ち出した次元の異なる少子化対策のたたき台をまとめる考えです。(以下略)

ちょうどこの日、娘夫婦は、小1と2歳児を連れて、この地を訪れていたようです。

こんな連絡をくれました。

奈義美術館いったけど首相来岡の影響で臨時休館でした!

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ビカリア博物館行ったよ

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奈義町現代美術館についての説明は、このページに詳しいです。

https://www.artagenda.jp/museum/detail/220

奈義町現代美術館についてABOUT Nagi Museum Of Contemporary Art

奈義町現代美術館は、奈義町(岡山県勝田郡)にある、通称Nagi MOCA(ナギ・モカ)と呼ばれる磯崎新の設計による美術館で、平成6年4月25日に開館。作品と建物が一体となっている。建物内に奈義町立図書館が併設されている。
国際的に活躍する荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の4人の芸術家に一般の美術館では収集不能とされる巨大作品をあらかじめ制作依頼し、その作品、又その全体の空間を作家と建築家が話合い、美術館として建築化したもので作品を本尊にたとえれば建築家はそれに覆い屋を架けるという発想から建てられた、いわば、作品と建物とが半永久的に一体化した、美術館である。
太陽、月、大地と名付けられた、外部からも明らかに認知出来るような形の3つの展示室から構成され、この土地の自然条件に基づいた固有の軸線を持っている。「太陽」の軸は南北軸、「月」の平坦な壁は中秋の名月の午後10時の方向を指し「大地」の中心軸は、秀峰那岐山の山頂に向かっている。
池に面した喫茶室から太陽、月、大地の展示室と同時に、借景になっている秀峰那岐山を望むことが出来まる。日毎、季節ごとにその表情の変化を据えることが出来るのは美術館の見所の一つである。

ビカリア博物館についてはこちらのページ

今から約1600万年前、奈義町周辺は海抜0mの海辺でした。
その証拠に、奈義町周辺からは、まき貝(ビカリア)を中心に動植物の化石が多数産出しています。
なぎビカリアミュージアムは、発掘された化石を保護・展示し、自然科学と親しむ施設としてオープンしました。
マングローブの生い茂った当時を再現したジオラマ、地層の断面に露出した自然の状態の化石など、
興味深い展示が満載で、太古の時代を体験することができる貴重な博物館です。

小1の孫が手に持っているのが発掘体験で手に入れたビカリアのようです。

pika

ところで、奈義町については、この記事でふれたことがありました。

そのかみの十五の吾も仰ぎ見し大き銀杏はとこしえにあり(2014-11-23)

(前略)昨日は、その岡山県勝田郡にある奈義町を訪ねhttps://kazsan.blog.ss-blog.jp/2014-11-23てきました。
この記事この記事、そしてこれらの一連の記事その1その2その3でもご一緒した、故旧の面々です。
朝、いつものようにヨシミさんの車に同乗させていただき、途中ヨシエさんとも合流して県北へ向かいます。濃霧注意報が出ていることを話題にしておりましたが、
何ということもない晴れたドライブ日和を楽しんでおりましたが、山あいの川沿いの道路には、かなり濃い霧が漂い、墨絵の景色が迎えてくれました。

(中略)

今回ツアーの「企画係」のヨシミさんは、昼食をとりながら奈義町を知ろうということで、現地の方のお話をうかがう機会をセッティングしてくれました。
陸上自衛隊駐屯地と日本原演習場があり、日米共同軍事演習の舞台ともなっている「基地の町」という姿が、奈義町の「もう一つの顔」です。
平成の大合併の時、奈義町は、近隣自治体との合併の道をとらずに、町制存続という独自の道をあゆんだことで注目されました。その決断を潔しとし、人々は心に快哉を叫んだものでしたが、反面、「自衛隊から金が落ちるからできたハナシ」と、少々苦い思いにとらわれる面も、正直あったでしょう。
そんな内情も聞いてみたいということで、ヨシミさんが縁故を頼ってお呼びしたのは、長い間「勝田郡平和委員会」の中心として、基地や平和の問題に積極的に取り組んでこられ、議会内最長の5期20年に渡って町議をつとめ、現在は副議長の任にあって、町政全般に通暁しておられる森藤政憲さんでした。
森藤さんは、私達一行とほぼ同世代か、ちょっと先輩という年齢ですが、若々しくて行動的、かつ温厚誠実な紳士で、奈義町の歴史やありのままの実状、課題を、資料も準備してざっくばらんに話してくださいました。
詳細を記録すれば、論文が書ける内容ですので省きますが、印象に残ったことだけをメモ的に箇条書きしておきます。
1)町の第一のセールスポイントが、「自然と芸術の調和」。これを一番に持ってくるとは、エライ。つくづく感銘を覚えました。これなくして、しあわせは成り立ちませんから。
2)「子育て応援宣言」のまち。保育料減額、医療費は高校生まで無料、町独自の育英奨学金、高等学校就学支援金、などなど、住民の要望を踏まえたこまやかな子育て支援策のあれこれ。
3)町営住宅、分譲地、若者定住促進住宅、雇用促進住宅など、手厚い移住支援。
4)無料福祉バス(町内各コースを一日3回巡回)の運行。高齢者に優しい。
5)主な産業は?農業だそうです。サトイモ、黒豚、奈義ビーフ、米粉、、、町の特産物を町を上げて育てる姿勢がはっきりわかり、道は険しくとも、やりがいと希望を感じます。
6)自衛隊関連大金への依存度は、一般会計歳入の6.7パーセント。多い年でも10パーセント。---これで、合併しなくても町制が維持できるのだから、ほか
の町村だって独立の道を歩むことが可能だよなと思いました。その方が遙かに、住民のかゆいところに手が届く、手厚い行政サービスができるはずなのに、、。
7)自衛隊基地への賛否は、世論が二分され、賛成がやや多いが、集団的自衛権への賛否は、反対が大きく上回るアンケート結果。自衛隊員家族の回答もふくまれているのでしょう。他地域に比べて不安と恐れは切実で、現実的なのだなあ。
昼食後、私達は奈義町役場の駐車場に車を駐め、隣の「奈義町文化センター」に向かいました。
「奈義町町制施行60周年記念」と冠した「横仙歌舞伎大公演」が、22日、23日の二日間の日程で催されるのです。(後略)

岸田首相が注目してくださったのは大変結構ですが、「奇跡の町」と特別視するのはお門違いというものでしょう。むしろ特別な「奇跡の町」ではなく、住民こそが主人公・住民の切実な声に耳を傾け、思い切って手厚い行政サービスをすすめるという、「当たり前の町」なのではないでしょうか。この当たり前を国全体に広げることが、少子化対策にとって有効であることはこれまた当たり前。2014年の記事からも、改めてそう思わされます。

岸田首相は「施策の拡充ももちろん重要だが、あわせて社会全体の意識を変えていくことが重要」とおっしゃったそうですが、「社会全体の意識を変えていく」ことは、経済的にも心理的にも安心して出産・子育てでき、誰もが未来に希望の持てる社会を具体的に展望することと不可分でしょう。行政の長である岸田さんのつとめは、「社会全体の意識」の変化を待つことではなく、出産・子育てに困難を覚えている一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、社会を挙げて困難の除去に努めるとのメッセージを発し続けながら、まずは「施策の拡充」に努力することにこそあるのではないでしょうか?


今日の付録

深山公園のシロハラです。

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深山公園のヒヨドリ。K1IM8961今日はこれにて。


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